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第8回 地域の困りごとを働く仲間、地域とともに解決する居場所づくり(江戸川区)

現在、子どもに関わる虐待や貧困、不登校、ひきこもり等の課題が社会的に大きなテーマとなっています。こうした事態を解決するために、江戸川区内で子育てや子どもに関する相談支援と「居場所づくり」を展開する、労働者協同組合ワーカーズコープ・センター事業団の江戸川ベースnappaを紹介します。

事業所立ち上げのきっかけ

江戸川ベースnappaの皆さま
<江戸川ベースnappaの皆さま>
 江戸川ベースnappa所長であるNさんは、区が運営する児童相談所の夜間電話相談事業に携わった際に、子供との関係や子育てに悩む親の生の声を聞き、地域で気軽に相談できる場所の必要性を実感しました。虐待を未然に防ぎ、関係性に困っている親子を直接サポートできないかと考え、職場で相談してみると、同じ思いを抱いている人が実は多いことがわかり、「居場所づくり」事業の実現を決めました。

居場所づくりに向けて

子どもの学習サポート「宿題室」の様子
<子どもの学習サポート「宿題室」の様子>
 事業立ち上げに向け、設立メンバーで出資金を出し合いましたが、開設資金が不足したため、法人内の近隣事業所に事業の理解と協力を仰ぎつつ、自治体などの助成金を活用することで不足分を賄うことができました。開設場所についても、メンバーと手分けして探し、区の制度を利用するなどして一軒家を見つけることができました。
 また、地域の方々に事業をご理解いただくことで、人や情報の交流が生まれ、地域が一体となった支援体制が構築できるだけではなく、コミュニティも豊かになると考えました。そこで、江戸川区役所の職員に相談し、一緒に地域の自治会長や関係団体を訪問、説明を重ねたところ、事業にご理解いただくことができ、令和4年4月に開所することができました。

意見を出し合える職場

子ども食堂について意見を出し合う
<子ども食堂について意見を出し合う>
 「時には喧嘩っぽくもなる時もありますが、意見を出し合いながらお互いを許し合える関係になっている」とKさんは言います。今でも昼や夕方に、組合員全員でその日の出来事を報告し、地域から持ち込まれた相談にもとことん話し合うそうです。
「様々な意見がぶつかり合いますが、大抵のことは最終的にまとまります」とNさんは語ります。さらに、「この事業に対する思いや目標に向けて、みんなで話し合いを大切にする『労働者協同組合』だからこそできる」と言います。
 また、Aさんは「元々英語教師をやっていた経験を活かしたいと思っていたところ、この居場所づくりの事業を知り、内容に共感して参加しました。発達に課題を持つお子さんのお母さんから話を聞きながら、本人に合わせて英語を教えることができるので、すごく喜ばれています。この事業に対する思いや目的に向けてみんなで話し合いを大切にする労働者協同組合だからこそ、居場所づくりができたのではないかと思います」と実感を語ります。
 一方で、全てが順調ではありませんでした。運営に対する仲間同士の思いにズレも生じます。立ち上げから関わっていた組合員が途中で辞めてしまったこともあり、人手が足りない中で事業がスタートしたという苦い経験もありました。

地域の力を最大限生かして

コロナ禍で移動型の地域食堂
<コロナ禍で移動型の地域食堂>
 少ない職員で事業は始まったものの、人手不足が解消できずにいましたが、地域の方に相談したところ、子ども食堂やフードパントリー等のお手伝いしたいと申入れがありました。
 また、子ども食堂やフードパントリーへの食材提供として、地域の方や企業からの協力、遠方からの定期的な魚や野菜の寄贈、「子どもたちに何か食べさせてほしい」と居場所に関わる有志の方100名ほどからの寄付などもあります。
 この事業に対する地域の感心の高さが伺えるとともに、開所時に地域との連携が図れたことが今の事業運営を支えています。
 現在、他の活動でも地域の方が担い手となっています。カフェや学習支援、絵画や野菜づくり等、多くの地域の方が関わり、居場所事業を運営しています。
 そういった地域一丸となった運営を行ってきたことで、地域の困りごとの相談を地域や自治体から受けるようになりました。その相談から実現したのが、ひきこもりの方へのお弁当配達事業です。
 この事業のニーズは高く、配達するドライバーが不足する事態となっていました。求人について近隣にある福祉関連団体に相談してみたところ、運転免許を所持しているひきこもりの方を紹介され、配達を任せることとしました。この方は、社会参加と就労訓練として5カ月間、当事者の思いにも寄り添いながら配達の仕事を続けました。この経験からこの方の就職への思いが高まり、配達事業の他に、子育て事業にも従事することが決まりました。

今後の展望について

 Nさんは「当初から描いていたことの一つとして、緊急時の利用が出来るシェルターのような機能をつくりたい。今後も労働者協同組合で働く組合員や地域、行政とも連携していくことで様々な課題を社会全体で乗り越えることもできると思う。まだまだ課題はあるが、居場所機能の拡充として駄菓子屋の併設を検討している。こどもの居場所とともに、ひきこもりの方の就労支援を兼ねた駄菓子屋をつくりたい」と話してくれました。
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