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第5回 広告代理業、ウェブサイト制作、飲食店などを運営する合同会社(墨田区)

墨田区に、小学校の同級生同士で設立し、協同労働の理念に基づいて運営している会社があります。設立前、ほとんどのメンバーに社会人経験はありませんでしたが、一人ひとりの得意を活かし、インターネット広告の請負、研究サポート、エジプト料理店、水たばこ店、動画・ウェブサイトの制作など、様々な事業を展開しています。

設立のきっかけ ~個性が活かせる働き方を求めて~

運営するエジプト料理店で国民食コシャリを提供
<運営するエジプト料理店で国民食コシャリを提供 >
 設立メンバーのひとりであるTさんは、以前は働くことに自信が持てず、学校卒業後も、就職をしませんでした。また周囲の友人たちも、将来への展望が持てないままアルバイトで生計を立てていました。そんな中、Tさんが久しぶりに友人Yさんに再会したことをきっかけに、状況が変わりはじめます。
 Yさんは就職していましたが、地元で起業するために帰ってきたところでした。「せっかくなら幼馴染と一緒にやってみたい」という想いから、Yさんは、小学校のときの友人に声をかけました。Tさんたちは当初、働くことへの不安感から躊躇していましたが、「各々の個性を活かして得意なことを仕事にすればいい」というYさんの言葉に可能性を感じ、創業に踏み切りました。
 友人同士で起業することから、“給料は自分で決める”、“全員が社長”という、協同労働に通ずるフラットな運営方針で会社を立上げることにしたそうです。

事業の運営 ~メンバー全員が平等な組織を目指して~

事業運営について、メンバー同士が日常的に相談
<事業運営について、メンバー同士が日常的に相談>
 現在、インターネット広告事業や飲食店など社員の得意分野を活かして5つの事業を展開しており、売上や営業利益によらず、話合いにおける議決権は1人1票としています。しかし、いくら友人同士であっても、話合いがスムーズにいくとは限りません。当初、全体会議ではなかなか活発な意見交換ができませんでした。「やればやるほど会議の雰囲気が悪くなっていた時期もあった。」とTさんは振り返ります。そこで、まずは議題をメンバー共通の関心事である“資金の使途”に絞ることにしてみました。その結果、各々が意見を出しやすくなり、議論が活発になったそうです。
 全体会議が機能し始めたことでメンバーの意識も徐々に変わり、自身の担当事業だけでなく、他のメンバーのことも気遣えるようになっていきました。例えば、全体会議を通じ、メンバー全員の給与を引き上げたことがあります。給料は事業部門ごとに決められるルールでしたが、「会社全体では利益が出ているので、全員一律で給料を上げた方がいいのではないか」という意見が出されました。当時は赤字部門が多く、数少ない黒字部門の利益が会社全体の経営を支えていた状況でありながら、黒字部門のメンバーが「自分一人の力で稼いだとは思っていない。みんなに気軽に相談ができ、支え合うことができているからこそ利益を出せている」と考えてくれたことで、メンバー全員の給与を上げることができたそうです。

今後の展望 ~ビジネスと公益の両立を志して~

インタビューに答えて頂いたTさんたち
<インタビューに答えて頂いたTさんたち>
 今後の事業展開についても、メンバー一人ひとりの想いを大切にしながら、話し合って決めていきます。あるメンバーは、「公益志向の事業として福祉的な事業に取り組みたいが、ビジネスとして利益をあげることはできるのか」と葛藤を抱えるようになりました。
 そうした悩みについてTさんは、「エジプト料理屋など業績の良い事業も出てきた。事業を拡大していくのか、それとも異なる業態を展開していくのか、選択の余地がある。利益をあげるだけでなく、公益も考えて、みんなで話し合って決めていきたい。例えば、既存事業を通じて居場所が無い若者の支援を行うことで、新しい形で地域課題の解決ができるかもしれない。」と話します。
 今後も協同労働の良さをさらに発展させる方法を模索していくとのことです。

今回紹介した会社は、協同労働を実践している東京ワーカーズ・コレクティブ協同組合に加盟している合同会社です。

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