メニュー

閉じる

第4回 保護者がフルタイムで仕事をしていても利用しやすい障害者支援施設(国分寺市)

国分寺市に、18歳以上の障害者を受け入れ、介護や就労支援を行っている施設があります。この事業所は、障がいのある子どもの預かり事業を行っている近隣事業所の職員が中心となり、ここを利用していた保護者たちの要望を受けて、令和4年に開設しました。19時まで開所していることから、仕事を持つ保護者も利用しやすいことが特徴です。

立上げのきっかけ ~仕事を持つ保護者のニーズに応える~

インタビューに答えて頂いたKさん
<インタビューに答えて頂いたKさん>
 この施設の設立のきっかけは、障がいのある児童の預かりサービスを行っていた事業所に寄せられた「保護者が正規雇用で働きながら利用できる施設はないか」という相談でした。この事業所では法律上、18歳までの就学中の子ども達しか預かることができません。学校を卒業すると、大人向けの介護施設等を利用することになりますが、そのような施設は日中のみの営業であることが多く、障害者の保護者はフルタイムの仕事を続けることが困難になってしまいます。
 人材不足や採算性など課題も多くありましたが、保護者たちと懇談を重ねる中で、ニーズがとても大きいことが明らかになり、また保護者たちからも協力の申し出があったことから、新しい施設の立上げに踏み切ることになりました。

いざ立上げ ~意見を出し合って課題解決~

バザーの準備に取り組む様子
<バザーの準備に取り組む様子>
 施設立上げメンバーの中心となっていたKさんは、設立にあたり課題が山積していることから、自分が指揮を執るのではなく、多くの人の意見を運営に反映させる必要があると考えました。そこで取り入れた運営手法が協同労働です。協同労働では職員一人ひとりの意見を組織運営に反映させます。Kさんは定期的にミーティングを開催し、立上げメンバーと意見交換を重ねました。
 例えば運営資金の調達です。協同労働では働く人たちの出資を運営資金としますが、この施設では夜間まで開所することを目的としていることから、資金不足となる懸念がありました。そこで話し合ったところ、「保護者から協力債という形で資金を集められないか」、「グッズを作ってバザーで販売してみないか」など様々な意見が出ました。そのような意見を運営に反映させることで立上げ資金を確保することができました。Kさんは協同労働について、「人に指図されてやるのではなく、自らが納得して行動するので、積極的に仕事に取り組んでいける。皆が同じ目標に向かって協力できるところが強みではないか」と話します。

地域の総合福祉拠点を目指して ~一人ひとりの意見から地域課題を解決する~

保護者や地域の方々との懇談会
<保護者や地域の方々との懇談会>
 協同労働では日々の運営の中にも個人個人の意見を反映させます。毎月の収支や業務のシフトなどもメンバー全員で共有し、全員で改善点を話し合っています。また、同じ課題を抱える保護者が他にもいるのではないかとの意見が出たことから、特別支援学校や福祉施設への訪問、地域食堂などのイベント開催を通じ、施設の広報を実施しました。やはり夕方以降の子どもの預け先を探していた保護者が多く、施設の利用者も徐々に増えていきました。このように運営メンバーの意見を起点に事業を改善していけることも協同労働の魅力の1つです。
 今後の事業展開についても話合いの中で出た意見を反映させています。「保護者の要望によって立ち上げた施設なのだから、保護者が望む事業をもっと行ったらどうか」という意見が出たことから、地域の保護者の方々にヒアリングを実施しました。「お菓子作りやカフェ運営を通じた就労支援があったらうちの子に体験させたい」、「子どもと一緒に暮らせて、働けるグループホームがあったら嬉しい」など様々な声を踏まえて、事業化に向けて話合いを進めています。
 Kさんは「国分寺市内だけでなく、周辺の自治体まで利用者を増やしていきたい。この施設を地域の福祉総合拠点としていきたい。」と話してくれました。

今回紹介した施設は、協同労働を実践しているNPO法人ワーカーズコープの事業所です。

ページの先頭へ戻る