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第3回 清掃、ポスティング、カフェ等を運営する事業所(世田谷区)

今回は世田谷区にある協同労働で運営する事業所を紹介します。この事業所は障害の有無や生い立ちに関わらず、お互いの個性を尊重し合い、誰でも元気に暮らし続けられる地域づくりを目指し、平成21年に事業を開始しました。清掃業務、チラシ・情報誌等封入発送、ポスティング、カフェなどの事業を運営しています。

立上げのきっかけ ~共に働ける場所づくり~

インタビューに答えて頂いたAさん
<インタビューに答えて頂いたAさん>
 代表のAさんは元々、地域の生活協同組合で働いていましたが、ある組合員の方から知的障害を持つ息子の仕事探しについて相談を受けました。しかし近隣に受け入れてくれる職場が無かったことから、「障がい者が元気に暮らしていくためには地域の中に働く場が必要だ」と考え、障害を持つ人も持たない人も共に働ける事業所を作る決意をしました。
 仕事は、障がい者の働きやすさや自身の経験も踏まえ、清掃受託業務からスタートすることにしました。また、「障害のある人を“受け入れる”のではなく、“一緒に”働く場所を作っていきたい」という思いから、運営はメンバーで話し合って仕事を作っていける“協同労働”の形をとることにしたそうです。

協同労働のメリット ~一人ひとりが経営者目線で働ける~

 協同労働を選んだ理由としてもう一つ、“事業に必要な資金をみんなで出し合う”という特徴を挙げてくれました。協同労働では、メンバー全員が出資をするため、組織運営にもみんなで参加し、意見を出し合います。出資をすることで“一人ひとりが経営者“という自覚を持てることから、働く全員が自律的で責任ある行動を取れるようになります。
 業務内容も意見を出し合って工夫しました。Aさんたちは、合成洗剤の使用を止めて人体や自然環境に影響の少ない石けんの使用を推進してきた経験があったことから、人にも環境にも優しい洗浄剤を使用することをこの事業所の売りにしました。そうした清掃方法は、地域の方々から支持を受け、仕事の受注につながっていきました。またこのような取組が地域から支持を受け、カフェの開設などその後の事業展開につながったそうです。

支え合う運営 ~互いを尊重する~

毎月の会議の様子
<毎月の会議の様子>
 この事業所では、一人ひとりが補い合う・認め合うということを理念として、能力に関係なく、全員が同じ給与で働いているそうです。Aさんは「ある人が、最初はできない業務があっても、経験者が補うことで、徐々にできるようになり、人の役に立つ実感も生まれる。今、仕事ができる人も最初は出来なかったこともあり、また得意不得意も違うので、そこをうまく組み合わせることが大事」と話します。
 また、協同労働で欠かせないのがメンバー間で十分に意思疎通を図ることです。この事業所では全員が参加する会議を毎月開催し、意見を出し合っています。
 Aさん「いろいろな人がいるから、小さなトラブルや感情的な行き違いが生じてしまう。いかに譲り合えるかが課題だが、それがなかなか難しい。それでも、みんなが意見を言って分かち合える所が良い。」
 一緒に働き、話し合うことは、仲間意識を芽生えさせ、コミュニケーション力を高めることにもつながっているそうです。例えば、少し前に長く引きこもっていた方がこの事業所に参加しましたが、当初は誰とも話すことができなかったそうです。しかしここで働くことで、仲間と話すことができるようになり、今では後輩の指導をしているそうです。自身の経験から同じような境遇の人の気持ちが分かるため、相手に穏やかに接することができ、後輩の安心感につながっているようです。
 Aさんは「就労を円滑に進めるには、そこで働く人たちが互いを認め合うことが大事。丁寧にフォローできるよう配慮しながら運営している。」と話します。

今後の展望 ~誰もが元気になれる地域づくり~

農作業の様子
<農作業の様子>
 現在この事業所では、誰でも働ける場所を充実させるために、更なる事業拡充に取り組んでいるそうです。
 まず、令和2年に事業所の2階にシェアハウスを開設しました。家が無くて困っている方の相談を受けたことがきっかけでした。続いて遊休農地を活用し農作業を開始しました。
 Aさん「身近な地域に小さな規模の事業所・働く場所を増やしていきたい。農作業は、他の仕事が続かなかった人と初めたことがきっかけだが、作業希望者が増えて手狭になってきた。畑の他に、車いすが通れるような田んぼを作りたい。」
 カフェ事業においても、お菓子の販売準備を進めるなど、活動の幅を広げていくそうです。
 最後にAさんは「将来的には若者も巻き込んで一緒に活動していきたい。同じ場所ではなくても、似たような事業をやりたければ、ノウハウを教えたり、事業を手伝うことも出来る。若者とうまくつながっていきたい」と今後の目標を語りました。

今回紹介した事業所は、協同労働を実践している東京ワーカーズ・コレクティブ協同組合に加盟しているNPO法人です。

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