第20回 仲間と共により良い働き方を実現する労働者協同組合(世田谷区)
(2026年2月掲載)
編集者として共に働いていた縁をきっかけに仲間が集い、書籍やパンフレットの編集をはじめ、展覧会、イベント、グッズの企画制作、SNS運営、PR業務など多岐にわたる事業を行っている労働者協同組合HATO文化編集部を紹介します。組合員や監事の皆様にお話を伺いました。
価値観に合うと感じて
組合員メンバー3人は、以前は出版社社員やフリーランスの編集者として書籍編集等の仕事に携わっていました。それぞれが数年前から、雇用されて働き続けることへの疑問を持ったり、インボイス制度への対応のために団結することの必要性を感じたりする中で、編集者として培ったスキルを活かし、キャリアを次のフェーズに移すことで、より良い働き方ができるのではないか、と模索していました。
そんな時に、現在監事を務めるKさんから労働者協同組合という選択肢もあるのではないかとの提案がありました。労働者協同組合の基本原理である「資金を出し合い、話し合って営み、共にはたらく」という考え方が自分たちの価値観に合っていると感じ、労働者協同組合の立ち上げを決断しました。
法人名称の「HATO」(ハト)は平和への願いを込めて名付け、ロゴマークのハトのデザインはこれまでの仕事で交流のあったデザイナーに依頼しました。
設立手続きに苦労も
設立当時はまだ法制度ができたばかりだったこともあり、こちらの不慣れさとあいまって、設立にかかる行政手続には大変苦労しました。労働者協同組合制度を勉強し、出資割合要件など一つ一つ理解を深めていきましたが、法務局にも労働者協同組合の設立登記書類のひな形がなく、別の法人形態のひな形を加工して作成する必要があるなど、スムーズにいかないことがありました。また、行政庁への成立届書提出後に細かい修正指導も入り、設立準備から所定手続きが完結するまで長い時間を要しました。
話し合える関係を大事に
メンバー間で安心して話し合える関係、信頼し合える平等な関係性を何よりも大切にしています。メンバーはもともと同じ志を持って集まった仲間ですので、組合の事業運営や事務回りについても、監事も含めた全員で何でも話し合いながら進めています。メンバー3人のうち2人は東京以外にも拠点がある二拠点生活をしていますが、ITツールも活用して意思疎通を図っています。
平和につながる文化活動を
現在の主要な業務として、六本木にある全日本海員組合本部会館で、図書資料室の選書、展示室のパネル制作、イベント企画運営サポート等を担当しています。
全日本海員組合本部会館は1964年建築で、2024年に大規模改修した建物です。当建物には、随所に建築学史上特筆すべき歴史的な構造や意匠があり、その魅力を伝える見学会も運営しています。展示では、船員の仕事や全日本海員組合が担っている多くの役割を、子どもにも大人にも分かりやすく伝えるため、見出しや説明文を工夫し、目線の高さに合わせて大人向け、子供向けになるようにしています。
また、埼玉県にある原爆の図丸木美術館では、パンフレット作成、SNS運営等を通年で行っています。平和を願うHATO文化編集部として大切にしていきたい仕事の一つです
その他にも、各メンバーの今までの仕事でのつながりで、平和や芸術活動、子育てや教育にまつわる仕事等、HATO文化編集部に合う仕事を紹介してくださる方もいて、そうした単発の仕事も多数お引き受けしています。
「ギルド型」の好事例を目指して
メンバーは今まで編集者として、大勢の関係者と話し合い、意見を調整し、成果物を完成させるという仕事を積み重ねてきました。この経験は労働者協同組合での業務運営に大いに役立っています。自分たちのように、専門分野を持った人が集まり、ギルド型に近い働き方をするために労働者協同組合を選択するという事例は、今後の労働者協同組合の可能性を広げるかもしれません。
本来、自分たちが豊かになり、社会も豊かになる働き方はできるはずですが、社会を豊かにするために誰かが我慢しなくてはいけないという価値観がまだ存在しているのも事実です。労働者協同組合という形態で働くことで、メンバー全員、「会社員時代やフリーランス時代よりも、楽しく豊かな気持ちで働けている」と実感しています。全員が経営に参画する労働者協同組合という形態で、各々の、仕事を取ってくるぞという気持ちも高まっており、これからも納得のいく仕事を収益も上げつつ続けていきたいと思います。
また、日本労働者協同組合連合会に加入したことで横のつながりができ、HATO文化編集部に仕事を紹介していただいたり、逆にHATO文化編集部の内部事務の委託先を紹介していただいたりと好循環も生まれています。
労働者協同組合の本をつくりたい
今はまだ法人としてスタートしたばかりで受注仕事がメインですが、今後は自分たちから発信していく仕事も手がけたいと考えています。展示やイベントも企画していきたいです。
また、労働者協同組合の設立やその後の活動について一冊の本にしたいという思いも持っています。本には、今の働き方でしんどさを抱えている人に働き方の選択肢を提示できるような内容も盛り込めたらと考えています。
同じ文化、志を持つ仲間が集まり、互いのネットワークを拡げていけば、支え合えるコミュニティが発展していきます。そのコミュニティでのご縁を大切に、これからも社会とつながる活動をしていきたいと思います。
