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第2回 人生の最期を支援する労働者協同組合(新宿区)
(2023年1月掲載)

労働者協同組合・ワーカーズ葬祭&後見サポートセンター「結の会」は、令和4年10月に東京都第1号の労働者協同組合として成立しました。僧侶、社会福祉士、石材店経営者として、「人の一生の最期」に関わってきた3人が、生前から死後までお互いに助け合えるようなネットワークの構築を目指し、葬送支援や後見事業などを開始しました。

立上げのきっかけ ~見逃されてきた、人生の最期への向き合い方~

発起人の皆さま 画像
<発起人の皆さま>
 日本では高齢化が進行し、今後多死社会に突入することが予想されていますが、核家族化や地域コミュニティの減少により、社会的なつながりが希薄化しており、1人で孤独に人生の最期を迎えるケースが今後更に増加することが不安視されています。僧侶のNさんは、これまで孤立して人生を終えた方々の供養を行ってきた中、人間関係のあり方や生前からの準備の必要性などについて、大きな課題意識を持っていました。また、社会福祉士のIさんは緩和ケアに携わった経験から、インフォームドコンセントや治療以外の事柄も含めた早期ヒヤリングの必要性について、石材店のSさんは、墓じまいや無縁仏の増加などこれからの墓の在り方について、それぞれ課題を感じていました。
 血縁、地縁が薄れていく中でどのように、これらの問題を解決していくか。Nさん達が考えたものが、それぞれの問題に縦割りで対応するのでなく、生前準備から死後の供養まで横串でつなげて、包括的に支援する事業でした。

労働者協同組合として事業スタート ~利用者の声に向き合う~

身寄りのない方の遺骨の引き取り 画像
<身寄りのない方の遺骨の引き取り>
 Nさんはこの事業を労働者協同組合として開始した理由を2点あげてくれました。
 まず1点目は株主でなく利用者を見て業務ができる点です。株式会社の仕組みでは出資者である株主の利益になる事業を行う必要があり、必ずしも本人や家族にとって望むサービスが提供できるとは限りません。労働者協同組合では組合員自らが出資者となることから、組合員の合意により、利用者のニーズに真摯に向き合うことができます。
 2点目はフラットな関係で組織運営ができる点です。労働者協同組合ではトップダウンでなく、組合員が意見を出し合って組織を運営します。「対等に意見を出し合うことで、それぞれの経験や専門性が活きてくる」とNさんは話します。結の会では、Nさんは僧侶として多くの葬儀を行ってきた経験、Iさんは社会福祉士として延命治療や在宅医療など医療現場を見てきた経験、Sさんは石材店として墓の役割を考えてきた経験など、お互いの専門的な立場で意見を出し合い、利用者の要望に対応しています。
 さらに、事業内容にも労働者協同組合の特徴が活かされています。葬儀などの葬送支援や身元引受などの後見事業のような外向きの事業のほか、組合員同士で生前(単身ケアなど)から死後(遺骨の引取りなど)まで助け合う、互助会事業も実施していくことになっています。
 Nさん「目の前の10人、20人同士が助け合って看取りを行い、お墓も作る。これが正に労働者協同組合の役割だと思う。」
 今後は毎月、看取りや成年後見制度、墓、互助会づくりなどをテーマに、誰でも参加できる勉強会を開催し、参加者のニーズをくみ取り、組合員の意見を反映させながら今後の事業に活かしていくとのことです。

今後の展望 ~次世代につながる仕組みを残す~

講演活動の様子 画像
<講演活動の様子>
 Nさん「日本の人口は今後急激に減少していくが、孤立者を出さないようにしたい。そのためには寺子屋的なみんなの顔が見える小さな民主主義のコミュニティをたくさん作っていくことが必要だと思う。それを担うのが労働者協同組合なのではないか。現在はまだ認知度が低いが、講演会などを通じて全国に広めていきたい。50年後、100年後を見据えて、次の世代にいい形でバトンを託したい。」
 来年度は、独り身の方にも死後のつながりを感じてもらうことを目的として、共同の墓「みんなのお墓」の設立に着手する予定とのことです。
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