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第1回 就労支援カフェ(豊島区)

豊島区に障害者総合支援法に基づく福祉サービス(障害者就労継続支援B型(※1))として「協同労働」(※2)で運営するカフェがあります。就労が困難な方々に対して、カフェの運営や菓子製造、雑貨の製作・販売などの機会を提供し、自立訓練など就労支援を行っています。今回はここで働く方々からお話を伺いました。
  • ※1 障害者就労継続支援B型

    障害のある方が、一般企業への就職が不安、あるいは困難な場合に、雇用契約を結ばないで軽作業などの就労訓練をおこなうことが可能な福祉サービス

  • ※2 協同労働

    労働者自らが出資し、それぞれの意見を反映して事業を行う働き方

立上げのきっかけ ~誰も活躍できる居場所づくり~

 このカフェを立ち上げたMさんは中学生の時から引きこもりでした。立ち直るきっかけを求め、「協同労働」で運営する就労支援施設に足を運び、支援プログラムの中で喫茶店の仕事を体験したそうです。協同労働特有の「働く一人ひとりの意見を運営に反映させ、皆で助け合う」という環境の中、自分のペースで業務ができたため、Mさんは「働くことに自信を持てるようになった」と話します。また、同じ施設を利用する若者と働き、互いを尊重し、得意不得意をカバーし合いながら仕事ができたため、自分の役割を実感することができ、その喫茶店はMさんにとって大切な居場所になったそうです。
 「自分と同じようにひきこもり経験を持つなど、生きづらさを抱えて働くことに悩む若者たちと一緒に働けたことが大きかった。働く中で自分の気持ちを素直に表現できた。」と語るMさんは、一緒に仕事体験に参加していた仲間たちと「こういう居場所を必要としている人がもっといるのではないか」と思い、同じような喫茶店を作ることにしました。
 準備を進める中、Mさんたちは、地域の方々の意見も取り入れた方が良いのではないかと考え、近隣住民の方々をお呼びした懇談会を開催しました。ひきこもりの若者だけではなく、高齢者や子育て世帯、障がいのある方も居場所が必要との声を受けたことにより、誰もが得意を活かせる場作りを目標に、まずは障がい者が就労を体験できるカフェを開設することになりました。労働者協同組合法の施行前でしたが、Mさん自身の就労体験から、運営は協同労働を実践してみることにしました。

日常業務の様子 ~一人ひとりの意見を大切に~

第1回 地域共生型就労拠点 こみっとプレイス 画像
<ミーティングの様子>
 協同労働では、誰か一人が経営方針を決めるのではなく、事業に携わる一人ひとりの意見を運営に反映させます。ミーティングでは皆が活発に発言し、新メニューの開発など全員で前向きに検討する様子が伺えました。
 お菓子作りを担当しているTさんは立上げメンバーの一人です。
 Tさん「ミーティングでは各々の意見を尊重し、発案があったものを形にするようにしている。例えば、ある人から地元の豆腐屋が好きで、そこの豆腐を仕入れてケーキに出来ないかと提案があった。みんなで検討し、商品化し、レシピを教え合いながら作っている。」
 就労支援についても協同労働の考え方を応用しています。就労支援利用者の自己肯定感を養い、自立を促すために、利用者をサービスの受け手というだけでなく、対等に働く仲間として迎え入れることを大切にしていて、ミーティングでもそうした意見を発信しているそうです。同じく立上げメンバーのCさんは「協同労働で運営しているからこそ、自立につながる就労支援ができる」と話します。
第1回 地域共生型就労拠点 こみっとプレイス 画像
<カフェで働く皆さま>
 協同労働では個人個人の意見を運営に反映させることから、円滑な運営のために色々と工夫が必要になります。
 Mさん「皆が常に集まれるわけではないので、情報共有と意思決定をどう進めていくのかが課題。意思決定に時間を要することを意識して早めに準備していくことを心掛けている。」
 Cさん「おとなしい人は主体性が発揮しづらいと思う。居場所がなくてここに来た人は自信がないことが多いので、声を上げられない人の声を拾うことが大事」
 経営がなかなか軌道に乗らず苦労した時期もあったそうですが、全員で知恵を出し合い、広報、営業、メニュー開発などを、各々の得意を活かしながら働くことで、売上が伸び、今では経営も軌道に乗っています。

協同労働の魅力と今後の展望

第1回 地域共生型就労拠点 こみっとプレイス 画像
<インタビューに答えて頂いた3人>
 「自分の気持ちの共有をさせてもらえる。しんどい時はしんどいと言える。」Mさんは協同労働の魅力をこう話します。
 最後に3人から今後の展望について話を聞きました。
 Cさん「このカフェに来る人みんなの『やりたい』が実現するように応援したい。みんなが楽しんでいる姿をみると、自分も嬉しくなる。コロナが落ち着いたら、児童館や高齢者施設のお祭りや地域のフリーマーケットなど、イベントにも参加したい。」
 Tさん「体力、気力をつけて、長く働きたい。資格を取得して一層このカフェの仕事に貢献したい。」
 Mさん「9月末からランチづくりも始め、みんなでにメニューを開発して、料理に取り組んでいる。今後も、多くの人の居場所となるように取り組んでいきたい。
 仕事をしてつらい思いをしてきた、そんな人たちがまだたくさんいる。『協同労働という働き方もある』と伝えていきたい。」

今回紹介したカフェは、協同労働を実践しているNPO法人ワーカーズコープの事業所です。

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